冬季・新年詠
冬季・新年詠
本誌「作品七句と自句自解」より
高木 良多
懐炉抱き嬥歌の山に登りけり
朧夜や灯を入れてゐる薬師堂
大八洲波立ち魚の氷にのぼる
蟇目 良雨
初鴉ほがらほがらと鳴き合へり
食積に攻防ありて妻の勝
髪刈つて松過ぎの雨心地よし
鈴木大林子
初日の出天の岩戸を開くごと
芦ノ湖にひたすら雪の降る夜かな
大雪や小鳥の居ない小鳥籠
乾 佐知子
神鈴の音に弾けし初雀
離村せし藁家の上や冬銀河
山黙す雪深しんと降り積めば
井上 芳子
義士の日やお壕の水の満々と
枯芭蕉小児科名医住みし坂
梅少し散らして済めり鬼やらひ
深川 知子
七五三憶良の歌が神殿に
大根干すいまも駅舎に貴賓室
冬霧の霽れて三山改まる
石川 英子
星曼荼羅となりし比叡山の淑気かな
風花や恵心僧都の駆けし道 (横川)
初灯し舟天井に飛天舞ふ (三千院)
花里 洋子
廃校の針なき時計山眠る
心地よき語りべの声帰り花
青空に抜きんでる富士寒波来る
堀越 純
桃雪の墓に白菊あえかなる
枯芭蕉室の八嶋の力石
福達磨買はんと登る燈二百
元石 一雄
投げつける子もゐて楽し雪遊び
雪遊び当たらぬように投げてをり
子ら囲む盆に載せたる雪兎
(つづきは本誌をご覧ください。)