俳句とエッセイ「東京ふうが」平成28年秋季号

東京ふうが47号(平成28年秋季号)

第8回「遊ホーッ」「遊ホーッ」317より

アメリカ大統領の演説ですが、誰だか分かりますか?

洒落斎

下記の演説はあるアメリカ大統領の就任12週間後と離任時のものですが、誰の演説か分かりますか?就任12週間後の演説は「平和のチャンス」という題で下記の内容です。

・製造される銃の一つひとつ、進水する軍艦の一隻一隻、発射されるロケットの一機一機が、究極的には飢えているのに食べ物を与えられない人々、凍えているのに着るものがない人々から盗んでいることになります。武装する世界が消費しているのは、お金だけではありません。労働者の汗を、科学者の才能を、子どもたちの希望を消費しているのです。新しい重爆撃機1機のコストとは、30以上の都市に新しいレンガ造りの学校を建てるコストです。人口6万人の町を賄う発電所を2つ建てるコストです。充実した設備が整った病院を2軒建てるコストです。道路をコンクリートで50マイル舗装するコストです。私たちが新しい戦闘機1機を50万ブッシェルの小麦で購っているのです。私たちは駆逐艦1隻を、8000人以上を住まわせることのできる新しい家々で支払っているのです。これは真の人間らしい生き方ではありません。戦争の脅威という暗雲の下で、人類が鉄の十字架に磔になっているようです。

離任時の演説では「産業複合体」の台頭、そして「巨大規模の恒久的な軍事産業」とその権力の回廊における「不当な影響力」に対する警告を発した。

この2つの演説が米陸軍の最も名高い将軍として国民の注目を集めた大統領の任期の 首尾を飾ったのだった。
以上はジェームス・スキナー著の『略奪大国』からの引用ですが、米陸軍の最も名高い将軍といえば、ドワイト・アイゼンハワー大統領とお分かりでしょう。

アイゼンハワーは、トルーマン大統領の後の第34代大統領であり、その次がケネディ大統領です。アイゼンハワーは今では忘れ去られた感が強い。但し、就任中の支持率は高かったようだが、次のケネディ大統領が若く、活動的に見えたこととソ連のフルシチョフがやたらと派手で目立っていたために、「何もしない大統領」と批判された。しかし最近の歴史家の投票では、全ての大統領(オバマ大統領を除き43人)の中で11番目と評価されているそうです。私の印象では、スターリンの批判をしたフルシチョフの存在があまりに目立っていた(良い意味でも悪い意味でも)のでアイゼンハワーの存在感はあまりなかった気がする。しかし上記2つの演説では実に立派なことを話しており、軍人だったことが信じられぬほどの穏和な平和愛好者だった。穏和さは当時の写真を見てもわかるが、怒った写真は見られない。上記のような演説内容を言えたのだから、その能力をいかんなく発揮し、大統領の職務をもっとしっかりと遂行して貰いたかったと少し残念に思う。


(つづきは本誌をご覧ください。)