「俳句」タグアーカイブ

よく動く蟹を選りをり年の市

高木良多講評
東京ふうが 平成26年 冬季・新年号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報344号~346号より選

よく動く蟹を選りをり年の市 石川英子

上五「よく動く」の説明がよく効いていて蟹の特色が簡明に捉えているので年の市がよくわかる句となっている。無駄な言葉は使わず、俳句は短いから省略することが肝要。


夏服の女子学生や鑑真廟

高木良多講評
東京ふうが 平成25年 秋季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報340号~343号より選

夏服の女子学生や鑑真廟 井上芳子

鑑真は唐の学僧で日本律宗の祖。七五三年に来日のときの暴風のために失明したが聖武上皇以下に授戒、のち唐招提寺を建立・鑑真廟に祀られている。今日はセーラー服の女子学生が大ぜい見えている。
鑑真廟と夏服の女子学生の対象が鮮やかに描かれていて良い。


赤シャツは父の目印潮干狩

高木良多講評
東京ふうが 平成25年 春季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報335号~336号より選

赤シャツは父の目印潮干狩  鈴木 大林子

潮干狩はお天気が良ければ大勢の人が見える。なかでも父の衣装が赤シャツであるのですぐに目につくという句。単純明快な句。「赤シャツ」の色彩が良いからである。


硝子戸の中の門松丸の内

高木良多講評
東京ふうが 平成24年 冬季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報332号~334号より選

硝子戸の中の門松丸の内 蟇目良雨

どんな貧しい家でも門松は門の内か外に飾られてあるのが普通の家であるが、この句の門松は硝子戸の内側に飾られてある。大きなビルの立派な硝子戸の内側なのであろう。丸の内なればである。その意外性が面白い現代俳句となっている。


潮の香の押しくる荒磯神の留守

高木良多講評
東京ふうが 平成24年 秋季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報329号~331号より選

潮の香の押しくる荒磯神の留守 堀越純

上五、中七までは平凡な写生であるが、下五の転換は非凡。沖縄では南の海の涯に神がいると信じられていていろいろの行事がある。この「神の留守」の下五にそのような島の国の信仰のような存在が感じられる秀句。


遠足の子らに風鐸鳴りやまず

高木良多講評
東京ふうが 平成24年 春季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報322号~324号より選

遠足の子らに風鐸鳴りやまず 深川知子

風鐸が鳴りやまずであるから風のために鳴りやまずなのであろう。そのため遠足の子らもその間出たり入ったりでその時間的経過が分かる句となっている。写生することが基本におかれているからである。


綿虫の湧く峠路の没り日かな

高木良多講評
東京ふうが 平成24年 冬季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報318号~321号より選

綿虫の湧く峠路の没り日かな  石川英子

綿虫と峠路と没り日で情景がはっきりと分かる。夕日の光の関係で綿虫のとぶ姿もはっきりと見える。写生が効いているからである。


新豆腐入荷と墨書なんでも屋

高木良多講評
東京ふうが 平成平成23年 秋季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報316号~318号より選

新豆腐入荷と墨書なんでも屋 元石一雄

 

田舎のなんでも屋の店先に半紙に大きな文字で「新豆腐入荷」と看板がでている。新豆腐の白と墨書の黒とが対照的で新豆腐がおいしそうに見える。