◆「俳句四季」に三回に分けて連載した「Legend 私の源流 皆川盤水」が完結した。調べながらの執筆だったので時間がかかってしまった。ここには、これまで不明だった皆川盤水先生の「かびれ」時代を掘り下げて書いた。これを書いたことで、盤水先生のことはほぼ書き尽した感がある。興味のある方はお読みください。
◆3月3日に素十研究者の第一人者である蒲原ひろし先生が亡くなられた。101歳であった。蒲原先生は、新潟大学病院の整形外科医師として素十に俳句を学び、素十の業績を研究してきた。文献に基づく研究を進めてこられ、素十の一番弟子と言われた村松紅花先生とは別の切口が面白かった。新潟から素十研究家がいなくなって淋しいと思っていたところ、その新潟から新たな素十研究家が出た。中本真人氏である。
俳人協会総会に参加したところ、俳人協会評論新人賞を受賞された中本真人氏とお話をする機会を得て、その評論集を戴いた。評論のタイトルは『新潟医科大学の俳人教授たち』で、勿論高野素十に触れているが、素十の親友中田みづほや虚子との関係にもページを割いている。中本氏は文學博士なので、理路整然と論を進めているので理解しやすい。新潟大学医学部内部の新資料により、当時が生き生きと描写されていて新鮮に映った。素十と立子のロマンスを前提に組み立てたなら、また別の切口が見えたのではないかと思った。私の素十論がまとまったら、議論してみたいと考えている。私が村松紅花先生にお会いして素十研究に入ったのも、俳人協会の総会の席上であったので奇縁を感じたのであった。
◆深川知子さん率いる「奈良あかね句会」の幾人かの方が「東京ふうが」に参加を希望しているので、今その準備をしている。仲間が増えて読み物が増えれば、都会の憂愁を詠う「東京ふうが」に相応しいものになるだろうと期待している。夏号あたりから編集を大幅に変えたいのでご了承願いたい。次回から原稿は蟇目良雨までお送り下さい。
◆私の句集『ここから』が文學の森俳句文学賞を受賞することになった。次回に特集を組みたい。
蟇目良雨
目次
|
1 |
名句逍遙 <59> |
蟇目良雨 |
|
皆川盤水秀句鑑賞 |
|
|
高木良多秀句鑑賞 |
|
|
2 |
作品7句と自句自解 ちょっと立読み |
|
|
7
|
黄昏や又ひとり行雪の人 |
服部梅年 |
|
7 |
素十名句鑑賞・第18回 ちょっと立読み |
蟇目良雨 |
|
11 |
高野素十年表・1 |
本郷民男 |
|
17 |
歳時記のご先祖様 (14) ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
─ 歳時のマニュアル化 ─ |
|
|
22 |
コラム「はいかい漫遊漫歩」『春耕』より ちょっと立読み |
松谷富彦 |
|
216 白玉にとけのこりたる砂糖かな 高浜虚子 217 鯛焼のまづ尾の餡をたしかめし 能村登四郎
|
|
|
22 |
随筆・韓国俳話あれこれ 25 ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
句集『朝鮮』の夏季より・夏の続き ほか |
|
|
25 |
私の愛唱句 (14) |
本郷民男 |
|
27 |
あとがき |
|
28 |
墨痕三滴 (俳句選評) |
蟇目良雨 |
|
30 |
句会案内 |
|
表3 |
東京ふうが歳時記 <59> |
編集部選 |
|
(つづきは本誌をご覧ください。)
今、「俳句四季」に頼まれて「Legend 私の源流 皆川盤水」を3回に亙って連載する準備をしている。私が初めて俳句を始めて、沢木欣一と皆川盤水に師事したが、それは直接の師である高木良多先生から勧められたからであった。沢木先生には10年間教えを乞うたが、皆川盤水が「風」をやめて「春耕」一本にしろと命じたので、それに従って「風」を辞めてしまった。従って、私は皆川盤水から多くを学んだことになる。盤水は、いわゆる俳論というものを持たなかったが、俳句の面白さ、醍醐味を味わうコツを教えてくれた。私が今も、寸暇を惜しんで泥くさく俳句にかじりついているのは盤水のお陰である。
なかでも「和楽」という言葉を教えられた。俳句を通して和楽を感じない人に俳句は必要が無いと言えるほど、「和楽」のこころは大切だと思う。
また、「誰か一人、俳人を研究しろ」と言われたことにより、高野素十を選んで研究してきた。縦の繋がり、横の広がりがどんどん膨張してきて、俳句の深部が見え出してきたのである。
皆さんにも、是非、研究に参加して貰いたい。本郷民男さんは韓国俳壇史の研究家として、多くの研究家から当てにされていることを誇らしく思う。私もそれに続くように頑張るつもりである。
蟇目良雨
目次
|
1 |
名句逍遙 <58> |
蟇目良雨 |
|
皆川盤水秀句鑑賞 |
|
|
高木良多秀句鑑賞 |
|
|
2 |
作品7句と自句自解ちょっと立読み |
|
|
7
|
服部土芳の蓑虫庵 |
遊艸 |
|
8 |
素十名句鑑賞・第17回 ちょっと立読み |
蟇目良雨 |
|
12 |
随筆・韓国俳話あれこれ 24 ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
句集『朝鮮』・新年の句・春になり ほか |
|
|
16 |
歳時記のご先祖様 (13)ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
20 |
ウズベキスタン旅行記ちょっと立読み |
弾塚直子 |
|
26 |
私の愛唱句 (13) |
本郷民男 |
|
29 |
母音交替による造語の句
|
本郷民男 |
|
34 |
墨痕三滴 (俳句選評) |
蟇目良雨 |
|
35 |
あとがき |
|
36 |
句会案内 |
|
表3 |
東京ふうが歳時記 <58> |
|
編集部選 |
|
(つづきは本誌をご覧ください。)
暑い日々が続いています。残暑と言うには言葉が足りません。酷残暑とでも言いたいくらいです。このところお陰様で体の調子がよく仕事が捗っています。
8月3日に京王線高幡不動で「あじさいまつり全国俳句まつり」が炎天下開催され、選者として参加しました。今回は仲間の入選率が低く残念でしたが、私は大きな収穫がありました。大会終了後、選者たちで酒を呑もうということになり、私も参加しました。参加した選者は星野高士(玉藻)、鳥居真理子(門)、福神規子(雛)、笹木弘(府中俳句連盟)、それに私です。5名で飲んだ席上で、星野高士さんにかねての疑問をぶつけました。
「高野素十と星野立子のロマンスの結果生まれたのが椿さんですか」
「いやあー、ヒキメさん。知らなかったのは私だけで、周りの人間からよく聞かされていました」
「13年間この問題を追いかけて来ましたが、その記録を本にして出して構いませんか」
「いや、構わないけれど、文字にして残ると俳壇史が引っくり返ってしまいますよ」
「そうですね。まとめた資料を高士さんにお送りしますから、目を通してください」
「読んでみたいですね」
ということでその日は終わりましたが、私が「東京ふうが」誌上で追いかけて来たことが間違っていなかったと確信した日でした。出版の話はゆっくり考えますが、今後高野素十の作品を鑑賞するときは、素十のおかれた状況を鑑みながら鑑賞をしないとおかしな鑑賞になることを多くの俳人に理解して貰いたいと思います。
高士さんは、その他虚子の関東大震災で京都へ疎開した時のエピソードも教えてくれました。
蟇目良雨
目次
|
1 |
名句逍遙 <57> |
蟇目良雨 |
|
皆川盤水秀句鑑賞 |
|
|
高木良多秀句鑑賞 |
|
|
2 |
作品7句と自句自解ちょっと立読み |
|
|
8 |
素十の名句の悲劇 |
蟇目良雨 |
|
10 |
素十名句鑑賞・第16回 ちょっと立読み |
蟇目良雨 |
|
13 |
随筆・韓国俳話あれこれ 23 ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
家集『合歓の花』・新年と春の句 ほか |
|
|
17 |
歳時記のご先祖様 (12)ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
20 |
コラム 「はいかい漫遊漫歩」ちょっと立読み (『春耕』より) |
松谷富彦 |
|
210 山に金太郎野に金次郎予は昼寝 三橋敏雄 211 子規は辞世の句を二度詠んだ 212 「俳句が好きでない、俳人も。」って?!(上) 213 「俳句が好きでない、俳人も。」って?!(下) 214 冬銀河子は目をあけて何を聴く 神沢利子 215 地に落ちるまでのいのちや春の雪 利子 |
|
|
26 |
私の愛唱句 (12) |
本郷民男 |
|
29 |
句兄弟と現代
|
本郷民男 |
|
39 |
墨痕三滴 (俳句選評) |
蟇目良雨 |
|
41 |
あとがき |
|
42 |
句会案内 |
|
表3 |
東京ふうが歳時記 <57> |
編集部選 |
|
(つづきは本誌をご覧ください。)
クロネコヤマトがメール便を廃止することになってから、後をどうするかを巡って数か月の間大騒ぎをした。クロネコメールは本当にいい仕組みだった。A4厚さ2㎝まで送れるのだからこれに代わるものを探すのは難しい。
私たちの趣味の文芸誌は、郵便制度の中では第三種郵便の位置づけで郵便料金が安く保護されているのだが、この仕組みは嘗て逓信次官だった俳人の富安風生が考案したものだと言い伝えられている。但し、発送部数が1回につき500部以上と言う制約がある。俳誌でこの第三種制度を利用しているのは、今では数少なくなってしまった。
「東京ふうが」は郵便局のゆうメールの仕組みを使って送ることになった。こちらは特別に申請をして、年間500部以上なら割引が適用されることを利用したものだ。
歳をとるとこうした変化に追い付いて行くことに難儀を感じるようになってしまfった。老いとはこういうものかと実感することが多くなった。
三月の末に入れたペースメーカーは大変順調に動いてくれている。あと10年は大丈夫そうである。
蟇目良雨
目次
|
1 |
名句逍遙 <56> |
蟇目良雨 |
|
皆川盤水秀句鑑賞 |
|
|
高木良多秀句鑑賞 |
|
|
2 |
作品7句と自句自解ちょっと立読み |
|
|
8 |
春水四澤に満つ 正岡子規 |
本郷民男 |
|
9 |
素十名句鑑賞・第15回 ちょっと立読み |
蟇目良雨 |
|
14 |
歳時記のご先祖様 (11)ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
17 |
随筆・韓国俳話あれこれ 22 ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
高官俳人の小原烏兎子・韓半島への赴任 ほか |
|
|
21 |
私の愛唱句 (10) |
本郷民男 |
|
24 |
コラム 「はいかい漫遊漫歩」ちょっと立読み (『春耕』より) |
松谷富彦 |
|
204 春の宵レジに文庫の伏せてあり 清水哲男 205 弁当を分けぬ友情雲に鳥 哲男 206 浅草「神谷バー」の電気ブラン 207 俳句とジャズ 208 假名かきうみし子にそらまめをむかせけり 杉田久女 209 鳥雲にわれは明日たつ筑紫かな 杉田久女 |
|
|
30 |
仮名遣いのお決まり
|
本郷民男 |
|
36 |
墨痕三滴 (俳句選評) |
蟇目良雨 |
|
37 |
あとがき |
|
38 |
句会案内 |
|
表3 |
東京ふうが歳時記 <56> |
編集部選 |
|
(つづきは本誌をご覧ください。)
漱石が卒業した千代田区立錦華小学校が、統廃合されてお茶の水小学校になり相当な年数が経ったので建て替えることになった。
妻や娘、息子が卒業した所縁のところなのと、建築を担当した業者が、今私が関係している再開発にも関係しているので、どんな建物を作るか興味が有ったので見学会に参加した。
地下2階地上6階建てで、エレベーターで6階まで案内して貰ったのだが、以降は屋上への上り下りを含めて徒歩で1出口まで隅々まで見学した結果、最後は足がふらふらになって息も絶え絶えになってしまった。
それ以後毎日ふらふらしておかしいなとは思っていたのだが、血圧が170を超える日が続いたためかかりつけの医院で診察を受けたところ、「すぐ大きな病院にかかれ」ということになった。東京新宿メディカルセンターへいったところすぐ入院して手術と言うのだが、やり残しのこともあり二日半の猶予を貰って、家に帰り残務整理を行えた。
「春耕」誌の選句や総合誌からの原稿依頼などを済ませて明日から入院し、27日にペースメーカーを入れる手術を受ける。 心臓の一部が老化したので交換するという当たり前のことらしい。退院後は若返っている筈なのでご期待下さい。
本郷編集長と亘真実さんの機転でとりあえず発行にこぎつけることが出来たが、以上の訳なので「東京ふうが76号」の私の担当部分は少し意を尽くしていないことをお詫びします。
2024年3月24日 蟇目良雨
目次
|
1 |
名句逍遙 <55> |
蟇目良雨 |
|
皆川盤水秀句鑑賞 |
|
|
高木良多秀句鑑賞 |
|
|
2 |
作品7句と自句自解ちょっと立読み |
|
|
8 |
歳旦試筆・歳暮懐紙 水間沾徳 |
本郷民男 |
|
9 |
歳時記のご先祖様 (10)ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
12 |
コラム 「はいかい漫遊漫歩」ちょっと立読み (『春耕』より) |
松谷富彦 |
|
198 亀鳴きて亭主は酒にどもりけり 内田百閒 199 木蓮や塀の外吹く俄風 百閒 200 夏嵐カフカの机傷いくつ 浅井慎平 201 毛虫を愛ずる美しく気高き姫君の物語 202 男性も〝座りション派〟が増えてます 203 立ち尿る老女の如く恋こがる 山崎愛子 |
|
|
18 |
私の愛唱句 (10) |
本郷民男 |
|
21 |
随筆・韓国俳話あれこれ 21 ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
金剛句歌詩集の外金剛と海金剛・隱仙臺や十二瀑 ほか |
|
|
25 |
俳句集『ペチカ』(荒木静雄著)によせて
|
|
|
31 |
林泉高致と季題
|
本郷民男 |
|
39 |
あとがき |
|
40 |
句会案内 |
|
表3 |
東京ふうが歳時記 <55> |
編集部選 |
|
(つづきは本誌をご覧ください。)
東京ふうが 令和6年秋季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報477回〜480回より選
ひとつ家に表札三つ鳥総松 深川知子
少なくとも三世帯が同居している家の前に、鳥総松が立てられている。大家と店子の関係か、それとも三世代の家族なのか知りたい。
シリウスを教えてくれし人と老ゆ 田中里香
青春俳句。嘗て語らった人と今共に老いを迎えている。シリウスが知的で詩的だ。
とくとくと脈打つやうに冬入日 弾塚直子
冬の落日が火の玉のように地平線に沈むとき、生ま生まと燃えて脈打つ心臓に見立てたか。
東京ふうが 令和6年秋季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報474回〜476回より選
冷まじや縁切寺の札の嵩 深川知子
鎌倉なら東慶寺だが、京都の寺の景色とか。何処にでも縁切寺があってよかった。
名月や見得切るやうに松の影 田中里香
松手入れは、この名月のために行われるのかと気が付かされた。見得を切る松の影の雄々しさ。
ガスの火のときには赤し栗を煮る 鈴木さつき
青いガスの火が煮零れて、一瞬赤くなった焔を見逃さなかった。
東京ふうが 令和5年秋季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報461回〜464回より選
上州のべえべえことば稲の花 古郡瑛子
面白い作品を作る人である。稲の花の咲く昼前に耳を澄ませていると農民たちが上州訛の「べえべえ」言葉で話し合っているのが聞えたのだ。赤城山の麓に育った作者には懐かしく聞こえて来たに違いない
すこしづつ我を失ふ花野道 弾塚直子
広々とした花野に立ったとき詩人の意識は段々薄れてゆき、今を忘れ過去を遡ったり、未来に飛んだりするのでは無いだろうか。花野には人生をリセットする力がありそうだ。
ポリバケツの田んぼに咲くや稲の花 伊藤一花
簡単に稲をポリバケツで育てると言っても様々な苦労があるのだろう。ようやく稲の花が開くところまで辿りついた努力も分かる。お米の収穫まで頑張って欲しい。
八十の坂を越えて分かることがある。これが老いて初めて知ることなのだろうか。そして無性に色々知りたくなる。死ぬまでに何でも知っておきたいという本能のようなものかも知れぬ。その原因を考えるに、俳句をやって来た延長線上にあることと関連していると思った。これ迄もいろいろ経験してきたが、俳句作りのように厳しく己を責めて来たとは思えない。多分70点、80点で事足りぬとして来たと今になって思うのである。体は動かなくなるが頭はまだまだ動いている。世の中のことを知り尽くしてから死にたいと思う。
ネットで古い映画を見るが、「キューポラのある町」を見て驚いた。吉永小百合の可愛い少女映画だとばかり思っていたが、格差社会や北朝鮮帰還問題などを含む大いなる社会性映画であった。死ぬ前に知っておいてよかったと思う一例である。
蟇目良雨
目次
|
1 |
名句逍遙 <54> |
蟇目良雨 |
|
皆川盤水秀句鑑賞 |
|
|
高木良多秀句鑑賞 |
|
|
2 |
作品7句と自句自解ちょっと立読み |
|
|
8 |
落柿舎ノ記 向井去来 |
本郷民男 |
|
9 |
素十名句鑑賞 (14)ちょっと立読み |
蟇目良雨 |
|
13 |
歳時記のご先祖様 ⑨ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
17 |
随筆・韓国俳話あれこれ 20 ちょっと立読み |
本郷民男 |
|
金剛句歌詩集の内金剛・内金剛に向かう ほか |
|
|
21 |
私の愛唱句 9 |
|
|
24 |
コラム 「はいかい漫遊漫歩」ちょっと立読み (『春耕』より) |
松谷富彦 |
|
192 冬凪ぎて砂に小貝の美しく 吉屋信子 193 蝉も哭き人も泣きけり今日真昼 信子 194 冷し酒写楽といふは屠龍なり 加藤郁乎 195 冷奴十年早い奴共 郁乎 196 地を這う視線で報道写真六十年 197 振り切るる線量計や草の花 柏原眠雨 |
|
|
30 |
関東大震災百年に寄せて ─ 何故、上野の山は燃えなかったのか ─ |
大多喜まさみ
|
|
32 |
俳諧と俳諧の源流小考 |
|
|
39 |
墨痕三滴(俳句選評) |
蟇目良雨 |
|
41 |
あとがき |
|
42 |
句会案内 |
|
表3 |
東京ふうが歳時記 <54> |
編集部選 |
|
(つづきは本誌をご覧ください。)
東京ふうが 令和5年夏季号「墨痕三滴」より
お茶の水句会報459回〜462回より選
角合はす牛の眼力油照 乾佐知子
真夏の牛相撲大会の一こま。隠岐や山古志では八月に闘牛が行われるから、こんな光景が見られるはず。角を合わせて一歩も退かない牛の眼を見れば、戦う意思をこめた眼力そのもの。多くの旅の中から得られた一句。油照の季語の採用で眼が脂ぎっているように思える。
魚の尾のまな板を打つ走り梅雨 田中里香
活き魚を調理するとき魚の種類は限定されるだろう。鯛、ヒラメ、鯵や鯉なども該当する。まな板に置かれて捌かれる魚は尾鰭を激しく俎板に打ち付ける。水しぶきがあたりに飛んだ刹那に、作者は梅雨の到来を感じたのではなかろうか。
遠くまで行くんだ僕の好きな夏 伊藤一花
お孫さんの言葉をそのまま句にしたように思った。夏休みにどこに行くのと尋ねたら「好きな夏だから遠くまで行くんだ」と返事をしたのだろう。多分これが正解だと思うが、作者自身も活動的な方であるから、心の底では同じようなことを叫んでいると思った。
都会の郷愁と風雅を俳句とエッセーに掬いとる俳句同人集団